Posted on February, 2022
テーマ型投資信託とは、投資テーマに基づいて銘柄選定や投資を行うファンドです。選ばれるテーマには世界情勢を反映したものや、今後期待される最先端技術を取り上げたものが多く見られます。注目のテーマを確認し、投資資産への組み入れを検討してみましょう。
投資信託協会の発表によると、2021年10月時点の公募投資信託販売数は5,980本です。運用を行うにあたりそのすべてを比較検討し、投資ファンドを決めるのは極めて難しいでしょう。投資家の投資方針や投資スタイルに合ったファンドを選ぶには、まず投資信託の種類を確認し、その中から自分に合ったものを選択するのが一般的です。
投資信託は、大きく「インデックスファンド」と「アクティブファンド」に分類されます。それぞれの特徴を確認しましょう。
投資信託の種類のひとつ目は、インデックスファンドです。インデックスファンドとは、ファンドごとにベンチマークとする指数に連動する値動きを目指す投資信託です。このような運用方針をパッシブ運用ともいいます。インデックスファンドがベンチマークとする指数には、以下のような種類があります。
▽インデックスファンドの指数の一例
(表=筆者作成)
インデックスファンドでは、運用会社が投資銘柄を選定する手間が少ないため、保有中の手数料である信託報酬が比較的低めに設定されます。
インデックスファンドの特徴は、値動きを把握しやすい点です。例えば、ニュースや新聞に載っている日経平均株価やTOPIXの値動きを見れば、ファンドの大まかな値動きを知ることができます。そのため、投資初心者でも保有しやすいファンドだといえるでしょう。なおインデックスファンドでは、指数の動きとファンドの値動きのかい離が小さいほど、運用会社の運用が優れているとされます。
アクティブファンドは、運用会社独自の投資判断で運用が行われるファンドです。組み入れ銘柄や組み入れ比率は、ファンドマネージャーが決定します。そのため、ファンドマネージャーの腕次第で運用結果が大きく変わります。アクティブファンドの特徴は、以下のとおりです。
アクティブファンドはファンドマネージャーが独自の運用を行うため、インデックスファンドを超える大きな利益を上げられる可能性があります。ただし、投資する銘柄選定や企業の調査といった手間がかかるため、インデックスファンドよりも信託報酬が高めに設定される点は知っておきたいポイントです。
さらに、アクティブファンドは運用方針によって主に3つの種類に分類されます。
ひとつ目は、株価が割安と考えられる銘柄に投資を行うバリューファンドです。2つ目はグロースファンドで、将来的に高い成長性と収益性が期待できる銘柄に投資をします。3つ目は、テーマ型投資信託です。テーマ型投資信託では、世の中で注目されるテーマに着目し、そのテーマに関連した銘柄に投資を行います。
この記事では、アクティブファンドのなかでも比較的初心者にもわかりやすいと思われる、「テーマ型投資信託」について詳しく解説していきます。
まずは、テーマ型投資信託の基礎知識およびメリット・デメリットを確認します。
テーマ型投資信託は、テーマに沿って銘柄を選定し運用を行うファンドです。多くのテーマ型投資信託は、株式を投資対象資産としています。
先述の通りテーマ型投資信託は、ほとんどがアクティブファンドです。特定の指数との連動を目指すインデックスファンドよりも、成長性の高いテーマへ集中的に投資することで高い成果を目指しています。
一方、2018年ごろからは、インデックスファンドのテーマ型投資信託も登場しています。投資銘柄の選定をファンドマネージャーに一任するのではなく、運用会社がテーマに沿うインデックスを事前に作成し、それに連動する運用を目指すものです。
数ある金融商品の中から、テーマ型投資信託が選ばれる2つの理由を紹介します。
ひとつ目の理由は、投資信託全般に言えることですが、運用のプロに分散投資を任せられるメリットがあるためです。投資信託は、多くの投資家から集めた資金をファンドマネージャーが運用し、利益を投資家に還元する金融商品です。運用をプロに任せられるため、投資にかける時間がない人や投資初心者でも、始めやすいといえるでしょう。
またファンドマネージャーは、集めた資金を複数の銘柄に分散投資します。分散投資とは、投資先を複数の銘柄にわけることで、値下がりなどにより資産が減るリスクの軽減を狙うことです。個人で分散投資を実践するには、複数の銘柄を売買しなければなりませんが、投資信託はひとつのファンドに投資するだけで、分散投資の効果を得られます。
2つ目の理由は、運用方針がわかりやすく大きな利益を狙えるためです。テーマ型投資信託は、投資銘柄選定の基準がはっきりしています。そのため、投資経験のない方でも、商品内容を理解しやすいといった特徴があります。
また、テーマは世の中の関心が高い事柄から選ばれていますが、そのテーマの話題性が持続すれば将来的に大きく値上がりすることも期待できます。
長期投資には、さまざまなメリットがあるため“投資の基本”とも言われます。テーマ型投資信託で大きなリターンを狙うのなら「成長が見込まれるテーマ」に「できるだけ長期で」投資していくことがポイントになるでしょう。
テーマ型投資信託に投資する際の注意点は、コストと純資産額の規模です。
先述の通り、テーマ型投資信託のほとんどはアクティブファンドであり、信託報酬が高めです。ただ、アクティブファンドは意味もなく信託報酬が高いわけではありません。インデックスファンド以上の成果を期待するのなら、選択肢として検討してみるとよいでしょう。
テーマ型投資信託に投資をするなら、純資産総額の推移は注視するべきです。純資産総額とは、ファンドの資産から負債などを除き有価証券などを評価した金額をいい、ファンドの規模および時価を示します。
純資産総額が減っているファンドは、売却する投資家が増え資金が流出している状態です。純資産額が減ると、資金不足によりファンドマネージャーの思うような運用ができなくなる可能性があります。また、純資産総額が定められた基準以下になると、繰り上げ償還され運用が終了してしまうケースもあります。そのため投資信託への投資では、純資産総額の推移は確認するべきポイントとされるのです。
テーマ型投資信託は、特に純資産総額の増減が大きいファンドと言われます。それは、テーマとなっている事柄への世間の関心が薄れると、解約する投資家が一気に増える傾向があるからです。テーマ型投資信託に投資をするなら、投資前はもちろん運用スタート後にも純資産総額の推移をチェックしておくことが重要になるでしょう。
最後に、テーマ型投資信託として注目されているテーマを6つ紹介します。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量ゼロ)は、地球環境改善のための最重要課題として世界中で注目されているテーマです。日本では、菅前内閣総理大臣が2020年10月の所信表明演説で「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言したことで、さらに注目が高まりました。岸田現内閣総理大臣もその考えを継いでおり、多くの企業がカーボンニュートラルへの取り組みを加速させています。
一言で「カーボンニュートラル」と言っても、その取り組み内容は多岐に渡ります。最初に思い浮かぶのは、太陽光や風力といったグリーンエネルギーの発電や供給・蓄電に関わる企業ではないでしょうか。他に、温室効果ガスの排出量が少ない自動車やバス・トラックなどの開発に関わる企業も、カーボンニュートラル関連銘柄です。また、二酸化炭素を吸収する森林の再生なども、カーボンニュートラルの取り組みのひとつとなります。
(引用:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」)
カーボンニュートラルのテーマ型投資信託は、ファンドによりどの分野の企業に重点的に投資するかが異なります。ファンド選びの際には、投資方針や組み入れ銘柄を確認し、魅力的だと感じるものを選びましょう。
AI(人工知能)も、近年注目が集まっているテーマです。AIが注目されるのは、その技術がすべての産業に応用できる可能性があるからです。2017~2025年の8年間で、世界のAI関連企業の売り上げが21倍になるとの試算があることからも、期待の高さがうかがえます。
AIの活用が特に期待される分野には、自動運転やロボティクス・フィンテック・VR・セキュリティ・IoTなどがあります。今後さらに高度情報化社会が進むと、AIによる高い情報処理能力はあらゆる分野で必要となるでしょう。このようにAI関連企業は、今後の成長が最も期待できる銘柄のひとつだといえます。
サイバーセキュリティとは、コンピューターやWebサイト、サーバーなどへの不正アクセスを防ぎ、電子情報の不正な取得や破壊、改ざんの防止を目的とした対策のことです。社会の至る所でデジタル技術が利用されるようになった高度情報化社会では、それだけ大きなサイバー攻撃のリスクを抱えることになります。
サイバー攻撃を受けると、個人情報や企業機密の漏洩だけでなく、国家の最重要機密が流出する可能性もあります。またインフラシステムが攻撃されることで、人々の生活が脅かされるといった危険性もあります。今後さらに社会のデジタル化が進むなら、サイバーセキュリティ関連銘柄もぜひ注視していきたいところです。
FinTech(フィンテック)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた言葉です。インターネットや情報技術、AIの発達により、近年フィンテック企業が次々と誕生しています。
フィンテックのサービスも、生活に欠かせないものになりつつあります。例えば、スマホやパソコンを利用した送金や入金、スマホ決済やAIを利用した資産運用サービス(ロボアドバイザー)、仮想通貨などもフィンテックに含まれます。
日本における個人の資産運用や電子決済の普及は、他の先進国に比べまだまだ低い状態です。個人の資産運用や電子決済がさらに広がれば、大きく成長するフィンテック企業も現れていくと考えられます。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、顧客や社会ニーズを基にデータとデジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデルを変革することです。それによって、業務そのものや組織・プロセス・企業文化などを変革し競争上の優位性を確立することが、DXの目的とされます。
DXは、すでにさまざまな分野で取り入れられています。例えば、人手が足りない一部の企業では、売り上げ実績や在庫管理などにAIが導入されています。また、セキュリティ向上のため、顔認証システムを利用する企業もあります。その他、eコマース(インターネット通販)の導入により、新たな販売チャネルの構築を実現しているお店なども、DXを取り入れている企業だと言えるでしょう。
今後もDXを取り入れる企業は、増えていくと考えられます。DX関連の銘柄は、多くのビジネスチャンスを持つ企業として注目されています。
5Gは、4Gに続く通信規格として2020年3月に実用化された次世代通信技術です。5Gの特徴は、4Gよりも高速で大容量の通信ができること、遅延(タイムラグ)を激減できること、複数のデバイスを同時接続できることです。一例を挙げると、これまで5分かかっていた2時間の映画のダウンロードが、5Gなら3秒で完了すると言われます。また、自宅で100台までの端末をつなぐことも可能になります。
5Gの普及により、スマートシティやスマート農業の発展などが期待されています。どちらも、政府が推し進めている事業であり、5G関連企業は今後も成長性が見込まれる銘柄のひとつであるといえるでしょう。
テーマ型投資信託は、テーマに沿った銘柄に投資を行うファンドです。投資方針や銘柄選定の基準がはっきりしているため、投資経験が少ない人にもわかりやすく運用を始めやすいファンドだといえます。
また、テーマ型投資信託のテーマには、カーボンニュートラルやAI、DXなど、情報化社会や環境問題を扱うものが多くあります。成長が見込めるテーマに、できるだけ長期的に投資していくことで、インデックスファンド以上の成果を狙っていくこともできます。
最先端技術やサービスの開発・ソリューションの提供を目指す企業への投資を検討しているなら、テーマ型投資信託を選択肢のひとつとしてみてはいかがでしょうか。
著者:N.ヤマモト
大学卒業後、都市銀行に入社。ファイナンシャルプランナーとして、おもに富裕層の資産形成・運用相談を担当し、投資信託や保険商品・債券・外貨預金の販売に携わる。その後はWEBライターとして、投資や資産運用についての情報を発信。子供の学費や老後資金作りのため、自らも20代から資産運用を続けている。